
一流ホテルのフレンチ部門で働くことは、料理人として最高峰の技術を磨けるだけでなく、待遇や労働環境の面でも大きなメリットがあります。
しかし、具体的な年収や、勤務時間、そして気になる休日の実態については、外部からは中々分かりません。
そこで今回は、ホテルフレンチ調理師の年収・勤務時間・休日の実態を詳しく解説します。
ホテルのフレンチ部門の年収や昇給の仕組み、中抜けシフトや残業代の支給、年間休日数、実際の労働環境、資格手当や役職手当など、基本給以外で収入を増やすための具体的な条件などをご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
ホテルフレンチ調理の年収・給与実態

ホテルの給与体系は、街場のレストランと比較して安定性が高く、役職が上がるにつれて大きく上昇するのが特徴です。
また、福利厚生や手当が充実しているため、額面以上の生活の安定を感じやすいという側面があります。
①役職別の推定年収と昇給のステップ
ホテルのフレンチ部門では、伝統的な階級制度(ブリガード)が給与に直結しています。一般的に、役職が一つ上がるごとに基本給が数万円単位で底上げされます。
<コミ(見習い・調理補助)>
年収 250万円 ~ 350万円。
20代前半の若手が中心です。
基本給は決して高くありませんが、大手ホテルであれば残業代が1分単位で支給されるため、繁忙期には手取り額が大きく増えることがあります。
まずはこの段階で、ホテルの厳格なルールと基礎技術を習得します。
<プルミエ・コミ(上級調理師)>
年収 350万円 ~ 450万円。
数年の経験を積み、セクションの一部を任されるようになるとこのランクに昇格します。
職務手当がつき始め、賞与(ボーナス)の算定基準となる基本給もアップします。
<シェフ・ド・パルティ(部門長)>
年収 450万円 ~ 600万円。
ソシエ(ソース担当)やポワソニエ(魚担当)といった部門の責任者です。
30代中盤からこの役職に就くことが多く、ここから「管理職候補」として扱われるようになります。
家族手当や住宅手当などの福利厚生の恩恵も最大化される時期です。
<スーシェフ(副料理長)>
年収 600万円 ~ 900万円。
現場の最高責任者の一歩手前です。
調理技術だけでなく、原価管理やシフト作成といったマネジメント能力が評価の対象となります。
このレベルになると、ホテルの業績に応じた特別インセンティブが支給されるケースも見られます。
<シェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)>
年収 800万円 ~ 1,500万円以上。
レストランの顔となる存在です。
メニュー開発の責任を負い、ブランド力を高める役割を担います。
実績次第では1,000万円の大台を大きく超えることもあり、独立開業するよりも高い収入を安定して得られるというメリットがあります。
②日系ホテルと外資系ホテルの違い
転職先を選ぶ上で、資本形態による違いを理解しておくことは非常に重要です。
<日系ホテルの特徴>
伝統的な日系ホテル(帝国ホテル、ホテルオークラなど)は、年功序列の傾向が残っており、長く勤めるほど着実に昇給します。
最大の特徴は賞与の安定感。
年間で4ヶ月から6ヶ月分以上の賞与が支給されるホテルも多く、年収に占める賞与の割合が高いのが特徴です。
また、退職金制度が充実している点も、長期的な資産形成において有利です。
<外資系ホテルの特徴>
外資系ラグジュアリーホテル(リッツ・カールトン、パークハイアット、アマンなど)は、完全な実力主義。
若くしてスーシェフ以上に抜擢されれば、同年代の日系ホテル勤務者よりも圧倒的な高年収を得られる可能性があります。
一方で、基本給が高い代わりに賞与が業績連動の「年1回」であったり、退職金制度が確定拠出年金のみであったりと、自己管理が求められる側面があります。
③資格手当てや特殊勤務手当の影響
<調理技能士(西洋料理)>
公的な技術証明として、月額数千円から1万円程度の手当がつくことがあります。
<ソムリエ資格>
フレンチ部門ではワインの知識が不可欠なため、調理師であっても資格を保持していることで専門職手当が加算されるホテルが増えています。
<語学手当>
外資系ホテルでは、英語やフランス語のレベルに応じて手当がつく場合があり、外国人シェフとの橋渡し役を担うことで市場価値が高まります。
勤務時間の実態と現場のリアリティ

ホテルのフレンチ調理師を目指す上で、多くの方が気になるのが勤務時間の長さや忙しさの実態ではないでしょうか。
「拘束時間が長い」「中抜けが大変そう」「残業代は本当に出るのか」といった不安を抱く方も少なくありません。
ここでは、ホテルフレンチの現場で実際に採用されている勤務形態や1日の流れ、残業や宴会対応のリアルな働き方について解説します。
転職後の生活を具体的にイメージできるよう、現場目線で整理していきましょう。
①1日のスケジュールと中抜けシフト
フレンチ部門の勤務時間は、ランチとディナーのピークが明確に分かれているため、その間に数時間の休憩を挟む中抜け(スプリット・シフト)という形態が一般的です。
例:典型的な中抜けシフトの1日
・10:00 出勤、ランチの仕上げと最終チェック
・11:30 ランチ営業開始
・14:30 営業終了、片付け、翌日の下準備
・15:00 中抜け休憩(約3時間)
・18:00 ディナー営業準備、コースの提供開始
・21:30 営業終了、翌日の発注、清掃
・22:30 退社
中抜けの時間は、ホテル内の仮眠室で体を休めたり、近くのカフェで語学の勉強をしたりと、スタッフそれぞれが自由に過ごしています。
このように一日の拘束時間は長くなりがちなため、その働き方を前向きに受け止められるかどうかが、ホテルで長く働き続けられるかを左右するポイントになります。
②残業代の支給と働き方改革の影響
かつての調理場では「修行」の名の下にサービス残業が当たり前とされていましたが、現代の大手ホテルでは厳格な勤怠管理が行われています。
ICカードによる打刻が必須となり、1分単位で残業代が計算される体制が整っています。
働き方改革の影響により、月間の残業時間には上限(45時間ルールなど)が設けられ、それを超える場合は人事部から料理長へ指導が入るほど管理が厳しくなっています。
その結果、限られた時間内でいかに効率よく仕込みを終わらせるかという「生産性」が、現代のフレンチ調理師には強く求められています。
③バンケット(宴会)業務との兼務
レストラン単体ではなく、結婚式やパーティーの料理を担当するバンケット部門への応援や兼務が発生する場合、勤務時間はさらに不規則に。
一度に数百人分のフルコースを提供するため、朝早くからの仕込みや、深夜に及ぶ撤収作業が発生することもあります。
ただし、これらも全て「時間外手当」の対象となるため、体力的な負荷はありますが、収入面ではプラスに働きます。
休日日数と休暇制度の実態

「調理師は休みがない」というのは一昔前の話です。
現代のホテル業界では、一般企業に劣らない休日数を確保することが、優秀な人材を獲得するための必須条件となっています。
①年間休日日数と公休の消化
大手ホテルの多くは、年間休日を105日から120日前後に設定しています。
・週休2日制(月8日〜10日のシフト休)
・有給休暇の計画的消化(年5日の義務化は徹底)
・リフレッシュ休暇(閑散期に1週間程度の連休を取得可能)
土日祝日は書き入れ時のため出勤となりますが、平日に休みが取れることで「どこへ行っても空いている」「役所や銀行の用事が済ませやすい」といったメリットを感じるスタッフも多いです。
②有給休暇の取得率向上への取り組み
近年のホテル厨房では、有給休暇の取得が積極的に推奨されており、チームで調整しながら交代で連休を取れる体制づくりが進んでいます。
特に比較的落ち着く時期(5〜6月、10月頃)には、有給休暇を活用して海外研修や国内の有名レストランを巡る調理師も増えています。
こうしたインプットの時間を確保することが、結果的に技術力や発想力を高め、プロとしての成長につながると考えられています。
③特別の休暇制度
結婚休暇、配偶者の出産休暇、忌引休暇などは、大手ホテルであれば就業規則に則って確実に取得できます。
また、育児休業を取得する男性調理師も徐々に増えており、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方が模索されています。
街場のビストロから転職するメリット

個人店や小規模なビストロからホテルへ移る際、年収や休日以外にも実感できる大きなメリットが3点あります。
<社会的信用と福利厚生>
ホテルの正社員という立場は、住宅ローンやクレジットカードの審査において非常に高い信用を得られます。
また、企業年金制度や財形貯蓄、自社グループホテルの優待宿泊など、個人店では得られない手厚いサポートがあります。
<役割の明確化による専門性の深化>
ビストロでは「一人で何でもこなす」ことが求められますが、ホテルは徹底した分業制です。
ソース作りに1日中没頭できる、肉の火入れだけを極めるといった、一つの工程に対する圧倒的なこだわりと専門性を身につけることができます。
<体系的なマネジメントスキルの習得>
数千万円単位の食材費をどうコントロールするか、数十人のスタッフをどう配置するか。
ホテルのフレンチ部門で学ぶマネジメントスキルは、将来的に自分の店を持ちたいと考えた際にも、非常に強力な武器となります。
👩🍳まとめ
ホテルのフレンチ部門で働く調理師は、高度な技術を磨けるだけでなく、安定した収入と整った労働環境を得られる点が大きな魅力です。
役職に応じて年収が明確に上がる給与体系や、残業代の適正支給、年間休日105〜120日前後といった制度は、街場のビストロと比べても安心感があります。
一方で、中抜けシフトによる拘束時間の長さや、宴会対応による繁忙期の負荷など、体力面での覚悟が必要な側面もあります。
しかし近年は有給休暇の取得促進や働き方改革が進み、長期的にキャリアを続けやすい環境が整いつつあります。
安定性を重視したい方、専門性やマネジメント力を高めたい方にとって、ホテルフレンチへの転職は将来の選択肢を広げる有力な一歩となるでしょう。
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2026.01.20
