帝国ホテル・ホテルオークラ東京・ホテルニューオータニは、長い歴史と伝統を持つ日本の名門ホテルとして、日本独自の“おもてなし文化”を守り続けてきました。
しかし近年、外資系ホテルの進出やグローバル基準のサービス、多様化する顧客ニーズにより、国内ホテル業界の競争は一層加速しています。
その中で、御三家がどのように時代の変化に対応し、新しい取り組みを行っているのかを知ることは、転職者にとって大きな判断材料になります。
各ホテルの姿勢や戦略は、働き方・キャリアアップ・求められるスキルにも直結するからです。
今回は、前回のコラム日本の老舗ホテル御三家①・日本の老舗ホテル御三家②に引き続き、日本のホテル御三家が外資系ホテルと向き合うために進めている取り組みや改革を、わかりやすくご紹介します。
相次ぐ外資系ホテルの登場
日本のホテル業界を長く牽引し、「三大ホテル」とも呼ばれてきた“ホテル御三家”。
しかし、デフレの影響や長引く不況による価格競争の激化に加え、国内外で相次ぐ新規ホテルの開業ラッシュにより、御三家も厳しい競争に直面するようになりました。
国内では、御三家に続く存在として、外資系ホテルを中心とした「新御三家」や「新々御三家」が登場。
さらに、世界的に展開する「世界4大ホテルチェーン」も続々と日本へ参入しています。
その結果、客室稼働率の低下、宴会需要の縮小、婚礼市場の落ち込みなど、さまざまな影響が顕在化。
従来のブランド力だけでは競争を勝ち抜くことが難しくなり、価格の見直しやサービス改善といった対策が求められる状況となっています。
新御三家/新々御三家/世界4大ホテルの登場
<新御三家>
1990年代頃から、高級ホテルが相次いで東京に参入しました。
御三家に続いて、日本を代表するホテルとして人気となった「ホテル新御三家」が下記の3つになります。
①パークハイアット東京 :西新宿
②ホテル椿山荘東京 :目白
③ウェスティンホテル東京:恵比寿
<新々御三家>
2000年に入ると、世界でも断トツに評価の高いホテルグループが日本に進出。
「新々御三家」と呼ばれ人気となったホテルが下記の3つになります。
①マンダリンオリエンタルホテル東京:日本橋
②ザ・リッツ・カールトン東京 :六本木
③ザ・ペニンシュラ東京 :銀座
新御三家・新々御三家と共に、日本への進出も積極的に行っている世界4大ホテルチェーンが下記のホテルになります。
①マリオット・インターナショナル
②ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス
③IHGホテルズアンドリゾーツ
④アコーグループ
4大ホテルチェーンの特徴は、傘下に多数のブランドを保持している点です。
全世界に様々なブランド名でホテルを展開しており、それぞれに1億数千万人もの会員を持っている強みもあります。
日本でも既に数多くの出店をしていますが今後も更なる開業が決まっています。
◎4大ホテルチェーンの開業予定
★マリオットインターナショナル
2023年:5ホテル開業
2025年:1ホテル開業予定
★ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス
2023年:2ホテル開業
2024年〜2026年:5ホテル開業予定
★IHGホテルアンドリゾーツ
2023年:3ホテル開業
2024年〜2026年:3ホテル開業予定
★アコーホテルズ
2023年に2ホテル開業
2024年〜2025年に26ホテル開業予定
その他外資系高級ホテルの登場
ご紹介させて頂いた4大ホテルチェーン以外にも、下記のような外資系高級ホテルの市場が拡大しています。
2023年〜も続々と開業しており、その8割以上が外資系ホテルとされています。
・ウェスティンホテル東京
・パークハイアット東京
・グランドハイアット東京
・ヒルトン東京
・ブルガリホテル東京
・アマン東京
・ジャヌ東京
ホテル御三家の取り組み
外資系ホテルの進出や市場ニーズの変化により競争が激しくなる中でも、帝国ホテル・ホテルオークラ東京・ホテルニューオータニは、老舗ホテルとしての強みを活かしながら時代に合わせた改革を進めています。
伝統を守るだけではなく、新たな顧客層の獲得やサービス品質の向上に向けたさまざまな取り組みを行っている点が大きな特徴です。
どちらかというと業務効率を重視している外資系ホテル。
差別化するために、「御三家」が取り組んでいる対策をご紹介します。
①帝国ホテル
①帝国ホテル東京の建て替え
24年度~36年度にかけて建て替えを予定しています。
本館の客室数を減らし、客室の面積を広くする事で顧客満足度の向上を目指します。
帝国ホテルを含む街区全体の開発プロジェクト「TOKYO CROSS PARK 構想(内幸町一丁目街区開発プロジェクト)」として、地域一帯で再開発を進めていく予定となっています。
②4軒目となるホテルを京都に開業予定
東京・上高地・大阪に次いで、30年ぶりの新規出店。
国の登録有形文化財である祇園甲部歌舞練場敷地内の弥栄会館の一部を保存活用しホテルとします。
客室数は60室のみとなっておりサービスを重視したラグジュアリーホテルとなる予定。
歴史的建造物に泊まるという素晴らしい体験を提供し、京都から日本文化を世界に発信する拠点としての役割を果たしたいと考えています。
③飲部門での顧客満足度の向上
東京内のフランス料理「レ セゾン」および日本料理「帝国ホテル寅黒」が、「ミシュランガイド東京 2023」において、一つ星に選出。
ホテル内での飲部門においても顧客満足度の向上を目指しています。
④安定した会員組織へのホスピタリティ
世界各国の方が宿泊する帝国ホテル。
宿泊客の30%以上は帝国ホテルの会員組織「インペリアルクラブ」のカードを持つ国内外のお客様となっています。
常にお客様視点での設備やサービスの強化による顧客満足に取り組んでいるため、安定した会員のお客様の宿泊が経営の安定を支えています。
②ホテルオークラ東京
①ブランド力と知名度のアップ
御三家の中で1番の売上高を誇っているホテルオークラグループ。
国内外で70店舗のホテルを運営をしており、2019年以降国内で10店舗を出店。
ブランド力と知名度のアップにより顧客獲得を目指しています。
②最高級ホテルとしての地位を確立
「ザ・メイン」内にあるエグゼクティブハウス禅(11〜12階にある87室の客室)は、2021年度格付け評価ホテル部門で最高評価の5つ星を2年連続で受賞。
③日本の伝統やおもてなしを重視
「世界の賓客を満足させる、日本の特色をしっかりとそなえたホテル」をビジョンに掲げ開業しました。
日本の伝統やおもてなしを大切にしているのが特徴で、日本の風土・伝統・文化を重視するホテルとなっています。
ホテル敷地内には、美しい日本庭園や和を感じさせる内装が施されており、日本の美と、一人ひとりのゲストにきめ細かく気遣いする「日本の心」を大切に開業時から多くのお客様をお迎えしています。
④安定した会員組織へのおもてなし
オークラ系会員組織「One Harmoney」の会員数は現在260万人。
日本ならではのおもてなしを強みに安定した会員のお客様の利用が売上を支えています。
③ホテルニューオータニ東京
①宿泊プランの強化
「鬼滅の刃」「初音ミク」「コジコジ」「Suzy's Zoo」といった人気アニメのキャラクターとコラボ。
ファミリー層にも人気を集めています。
②飲食部門の強化
和食・中華・フレンチ・エスニック・鉄板焼き・カフェなど38店舗の豊富な飲食店が揃っています。
ホテルニューオータニオリジナル商品の展開や、食品大手の日本ケロッグの監修等も行っておりブランドの知名度アップに繋がっています。
③SDGsへの取り組み
地球環境への配慮がお客様への大切な「おもてなし」であるという考えの下、ハイブリッドホテルプロジェクトに取り組んでいます。
地域と連携した災害時の対応やクールスポットの形成、ホテルと事務所等の異種用途で構成される施設特性を活かした効エネルギーシステムの構築、CO2削減対策などが評価され、国土交通大臣より「サステナブル建築物等先導事業」に認定されています。
港区より「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」において「CO2固定量を認証した建築物」としても認定。
まとめ
外資系ホテルの参入が進み、国内のホテル市場はこれまで以上に競争が激化しています。
その中で、日本のホテル御三家である帝国ホテル・ホテルオークラ東京・ホテルニューオータニは、長い歴史と伝統を守りつつも、時代に合わせた積極的な改革を進めています。
帝国ホテルは再開発や新規出店によりブランド価値を再構築し、オークラは国内外への展開強化と高品質な“日本のおもてなし”で存在感を高めています。
ニューオータニは飲食・宿泊プランの充実に加えてSDGs活動を推進し、新しい顧客層を獲得。
こうした御三家の取り組みは、今後ホテル業界で働く人にとって大きなヒントになります。
伝統と革新をどう両立しているのか、どのようなサービスが求められているのかを理解することで、自分がどのホテルで、どのようなキャリアを築きたいかを具体的に描きやすくなるでしょう。
外資系ホテルとの競争が続く中でも、御三家は唯一無二の魅力と強みを持つ存在であり、働く環境としても多くの学びと成長のチャンスがあります。
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2025.12.20

