
旅行、結婚式や特別な記念日、出張など私たちの日常や人生の節目に欠かせない存在である「ホテル」。
ホテルで過ごす時間は、非日常のひとときですよね。
「最高のホスピタリティを提供したい」「人を喜ばせる仕事がしたい」——そんな思いから、ホテルで働きたいと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、ひとくちにホテルといっても、その種類やそこで働く人々の役割は多様です。
そこで、「ホテルの種類」「ホテルの職種」「ホテルの役職」の3つの視点から、ホテル業界の仕事を解説していきたいと思います。
今回は、「ホテルの役職」についてご紹介しますので、これからホテル業界を目指したいという方は、是非参考にしてみて下さいね。
ホテルの役職一覧
快適なサービスや洗練された空間の裏側では、多くのスタッフが役割を分担し、連携しながら働いています。
一般スタッフの上に、様々な役職があり、管理職はホテル運営の基盤として重要な役割を果たしています。
ここでは、各役職ごとの仕事内容をご紹介していきます。
<ホテルの役職一覧>
一般スタッフ
↓
リーダー
↓
部門長
↓
副支配人
↓
支配人
↓
副総支配人
↓
総支配人(ゼネラルマネージャー)
※企業によって設置していないホテルもあります。
総支配人
総支配人は、ホテルのトップを担う役職で総指揮官。
通常ゼネラルマネージャー(GM)と呼ばれており、一般企業に言う社長にあたるポジション。
ホテルの運営と経営に関する全ての責任と権限を持っています。
総支配人の下に副総支配人もしくは副支配人がつき、更に宿泊・料飲部・宴会部門など全ての部門が管理下となります。
総支配人は、利益・顧客満足・従業員満足の3つを高める事が使命。
総支配人の仕事は、数字として結果を出す事はもちろんの事、売上やコストといった経営状況を把握し、それに応じて中長期的な事業計画を考えます。
また、顧客満足を高めるため提供サービスの質の確認・把握、従業員が満足して働ける環境作り、持っている力を発揮できるような仕組み作りなど多岐に渡ります。
その他にホテル内の掃除や設備・備品に不備がないか細かくチェックしたり、著名人やお得意様などVIPが訪れた際は自らお出迎をし接客する事も。
常に多面的に物事を考えて最良な判断をする力が求められます。
副総支配人
ホテルによっては、総支配人の補佐役として副総支配人を置いているところもあります。
通常アシスタントゼネラルマネージャー(AGM)と呼ばれており、一般企業に言う副社長にあたるポジションになります。
仕事内容としては、経営管理やサポート、各部門への対応、設備や備品の管理、お客様対応など多岐に渡り、ホテル業務が円滑に進むよう務める事。
総支配人のサポート役として、トップである総支配人とホテルの各部門の間に立ち、調整したり取り仕切る重要な役割があります。
支配人
ホテルの規模にもよりますが、比較的大規模なホテルの場合、宿泊部門・料飲部門・宴会部門など各部門ごとに支配人(マネージャー)が置かれます。
業績や顧客満足度向上のため、経営の指針となる計画を立て、各部門での目標を明確化し落とし込みをしていきます。
それぞれの部門の売上・業績管理や、お客様満足度の向上のために何ができるのかを施策し、指示を出すのが仕事になります。
また、各部門のスタッフを束ねる重要なポジションであり、マネジメント力やリーダーシップが問われると共に、職場環境の改善などにも努めます。
部門全体の業務が円滑になるようコントロールしつつ、部下のスタッフ一人ひとりとコミュニケーションを取り信頼される存在になる事が理想。
また、総支配人が不在の際は、支配人や深夜の支配人でもあるナイトマネージャーが同様の役割を果たす事も。
支配人には、推進力や実行力・実務スキル・コミュニケーション力などが求められます。
部門長
部門マネージャー・セクションヘッドとも呼ばれています。
前コラムでご紹介したように、ホテルは宿泊部門・料飲部門・宴会部門・営業部門・管理部門などに分かれています。
部門長は、それぞれの部門を統括し、スムーズな運営と高いサービス品質の維持を担う中間管理職。
【共通する仕事】
現場での仕事よりも、スタッフ管理・顧客対応(最終責任者)・売上管理・他部門との連携・サービス向上のための施策や改善などがメインの仕事となります。
具体的には、スタッフのシフト・勤怠管理や教育・指導・マネジメント、クレーム対応、VIP顧客の対応、予算管理・顧客満足度の分析や戦略立案などを行います。
【部門別の仕事内容】
*宿泊部門*
・予約管理、稼働率、客室単価の管理
・客室の清掃状況や品質管理
・サービスの質の向上、スタッフ教育
*料飲部門・宴会部門*
・メニューの開発、原価管理
・各料飲施設の売上管理
・宴会や婚礼、イベントの企画・管理・統括
・他部門(衣装・調理・装花等)との連携
*営業部門*
・宿泊、宴会、婚礼、イベント等の販売促進
・法人営業、旅行代理店との連携
・マーケティング、競合分析
・ホテルやイベントのプロモーションや企画
必要なスキルと資質
ホテルは、様々な部門で専門スキルを持った多くの人の連携によって成り立っています。
その中で、スタッフのマネジメントを行い、経営目標と顧客満足の両立を図るのが役職者(管理者)の役割。
ホテルの役職者に求められるスキルは、ポジションによって多少異なりますが、共通して重要視されるスキルがいくつかあります。
ホスピタリティ精神
ホテル業で最も重要視されているのがホスピタリティ。
誰にでも平等に思いやりの心を持って接し、相手に喜んでもらう事を目的とした行為を提供する事です。
顧客満足を第一に考える姿勢を管理者が持つ事で、スタッフにも浸透させる事ができます。
リーダーシップ
役職者はチームをまとめ、目標に向かって組織を導く立場にあります。
スタッフ一人ひとりの強みを見極めながら明確な指示を出す事が求められます。
コミュニケーション能力とは、相手の要望や希望を的確に理解・判断し、答えを提供する事。
お客様への対応でも円滑なコミュニケーションは不可欠ですし、スタッフ間の連携でも必須となります。
マネジメントスキル
役職につくと、部下であるスタッフのシフト管理・教育などのマネジメントや、コスト管理・売上管理・KPIなど、経営的視点でのマネジメント能力も必要となります。
冷静な判断力や対応力
クレーム対応や突発的なトラブル処理など、現場で迅速に判断・対応できる能力が必要です。冷静さと柔軟な対応力が問われます。
◎管理者には、経験や知識はもちろんの事、総合的なスキルや人間力が必須となります。
ホテルでのキャリアパス
ではホテルではどのように、キャリアアップしていくのでしょうか。
ホテルにおけるキャリアプランは、「ゼネラリスト」と「スペシャリスト」の2つに大きく分けられます。
ゼネラリストは「総合職」、スペシャリストは「技術職」、とイメージして頂くと分かりやすいかもしれません。
今回ご紹介させて頂いたキャリアプラン は「ゼネラリスト」になります。
ゼネラリストコース
ゼネラリストとは、幅広い知識やスキルを持ち合わせた者の事を指します。
そのため、ホテル内の各業務を把握するために、様々な部門・分野で経験を積み、全体を見通すマネジメント知識や能力をつけていく事が必要となります。
ゼネラリストコースを選んだ場合は、様々な現場で接客経験などを積んだのちに、マネージャーや支配人といった役職に就き全体のマネジメント能力を身につけていきます。
ホテル経営の中枢に携わりたいという方は、最終的に総支配人までステップアップする事が可能です。
前述したように総支配人とは、ホテルのトップを担う役職で、ホテルの運営や経営に関する責任と権限を持つ事業執行責任者。
ホテル全体をマネジメントし成長させていく重要な役割を担います。
スペシャリストコース
スペシャリストは、高い専門的な知識を持っている者の事を指し、部署の異動をする事なく1つの部署でそのみちを極めていきます。
シェフ・パティシエ・バーテンダー・コンシェルジュなどが当てはまるでしょう。
一つの職務を全うしたいという方は、実力次第で自分の磨いてきた専門スキルを存分に活かし続ける事ができます。
◎スペシャリスト・ゼネラリスト共に、ホテルには不可欠な人材であり高いスキルが求められます。
しかし、キャリアパスはホテルによっても異なります。
今回ご紹介した役職に就くことを目指すのであれば、フロントやサービスなどの現場で経験を積んでから、「ゼネラリスト」としての道を選ぶようになります。
まとめ
ホテルの役職に関してご紹介しました。
ホテルの運営は、各部門のスタッフと役職者が連携して成り立っており、役職には一般スタッフ〜総支配人までの階層があります。
役職者は、ホスピタリティ精神やリーダーシップ、マネジメント能力など多様なスキルを活かしながら、業務の統括や経営に関わる重要な役割を担います。
キャリアパスとしては、幅広い業務経験を経てマネジメントを目指す「ゼネラリスト」と、専門職に特化する「スペシャリスト」に分かれており、自身の目指す方向に応じた成長が可能です
ホテル業界でのキャリア形成には、現場での経験とスキルの積み重ねが不可欠です。
これからホテルで働きたいという方は、「どのようなキャリアを積んでいきたいのか」をしっかりと考え転職活動を進めていくようにしましょう。
2025.06.20